右手に見えますはインフェリアでございます♪
「さぁ!秒読み入りますよ!?あ・メルディさんくれぐれもそこの獣は操縦席に近づけないように!
・・ってフォッグさん!機内は飲食禁止となっています!ポップコーン落とさないでくださいね!!
キ・・キールさん!!重量にも制限はあるんです!くれぐれも本は持ってこないでくださいって言ったじゃないですかぁ!!」
エンジン音を響かせ、バンエルンティア号はまさにセレスティアの大海を飛びたたんとしていた。
時はネレイドとの戦いより1年後・・・
セレスティアに帰ってきたチャットの元に、1通の封筒がインフェリアから送られてきたのだ。
『セレスティアン一行様湯ったりインフェリア観光〜インフェリア旅行会社〜』
どういった経緯で送られたのか。
とりあえず行ってみないことには始まらない。チャットはフォッグ、メルディ、キールを呼び出したのだった。
「それじゃあな。僕はちょっとミンツに帰って論文を整理してくる。」
「バイバ!?キール行っちゃうのかぁ?」
「あぁ。別に僕はインフェリアの観光なんかしたくもないしな。メルディは行くだろ?」
「う〜ん・・どうするかぁ・・・メルディもキールがところついていくよっ!」
「・・・メルディ・・・」
「はいな♪」
「・・・いつぞやおまえが気に入っていた「ミンツまんぢう」は販売中止になったぞ・・・?」
「バイバっ!?」
なんとなく言い合っていた二人を傍観しつつ、チャットはうめいた。
「・・・あの獣がいなくなるならなんでもいいです。」
「おう。アレよ。アレ。」
満足げに虚空を見つめるフォッグにチャットはただならない不安を覚えていた。
「・・旅行会社の人遅いですね。」
「おう。」
「・・なにしてるんでしょうか・・客を待たせて・・・サービス業失格ですよ。」
「おう。」
「大体不景気な世の中消費者を第一に考えることが先決でしょう。ましてや公営の会社なんですからねぇ。」
「おう。」
「・・・・・・・・」
「おう。」
(・・・ア・・翻訳(アイラさん)連れ来るべきでした・・・)
やたら重い頭を抱えつつ、チャットはうめいた。うめくしかなかった。
「やぁ。ようこそいらっしゃいました♪」
妙に軽い声が背後から響き、二人は訝しげに振り返った。
「王立インフェリア旅行会社の者です。「猫好き愛護会」の皆さんですね?」
「な・・誰!?愛護会!?しかも「猫」を愛護するんじゃなくて「猫好き」を愛護するんですかっ!?」
「あ・すいません。間違えました。なにぶんスケジュールが混んでますからねぇ。本日でもあと3組停滞しているんですよ。」
「本日って・・・日帰り!?ってか愛護会ってなに!?そんなのいるわけないじゃないですかっ!」
「え?いますよ?8人くらい・・あ・この人あなた知っているんじゃありませんか?ヒアデ」
「うわぁああ!!言わないでください!なんか想像つくしありえそうだから言わないでください!」
「そ・・そうですか?それじゃあハキハキいきましょう♪私のことはレイちゃんとでも呼んでくださいね。」
「・・・真顔で恥ずかしいこと言わないでください。」
「さぁさ。お客様たちの交通手段はなにで?」
「そ・・そこの港に留めている船ですけど・・・?」
「そうですか。それじゃあ乗り込んでください。」
「・・・へ?」
「交通手段のほうもセルフサービスとなっておりますので。」
「僕達が徒歩で来てたらどーするつもりだったんですかっ!!」
「もちろん徒歩で♪」
「んな無茶なっ!」
「・・・・・おう。」
妙な胸騒ぎを覚えつつ、一行はバンエルンティアに乗り込む。
チャットは、とりあえず今日一日が無事終わることを懇願していた。
「え〜。右手に見えますは、我等が王都インフェリアでございます♪」
「・・・」
「今なら劇「ウルタス・ブイ」が公開していますね。時間の関係上カットさせていただきます。」
「・・・大丈夫なんですか・・?この旅行会社・・・」
「え〜1話、2話等話を別けて公演するこの劇。非常に消費者に優しくありません。最初のほうは安いため、中途半端に見てしまう
ユーザーも多いことでしょう。」
「ユーザーって誰っ!?」
「あ・そうそう。王立天文台も有名ですねぇ。どこぞのもやしっ子はここで勉強することが夢だったそうです。」
「もやしって言ってあげないでください・・・;」
「さぁそれではどんどん進んでいきましょう♪」
「終り!?」
「さぁさぁこちらが有名な霊峰ファロースです。」
「インフェリアとセレスティアを繋ぐ賭け橋があるところですね。」
「おぅ。アレだな。」
「いぃえ。時代錯誤なんちゃって平安人もどき晶霊が頂上に巣くっています。」
「な・・なんて罰当たりなことを・・・」
「・・・はずれてもねぇけどな・・・」
「あぁ・・僕は知りませんよっ!」
「あ・・あの・・レイちゃんさん・・・?猛スピードで空が曇ってゆくんですけど・・・」
「・・・触れたようですね・・・」
「え?」
「晶霊様の逆鱗に触れたそうです。さぁさ。早く船を出して出して♪」
「うわぁああああん!!!」
「も・・もう厄介ごとは嫌ですよっ!ちゃんと案内してくださいっ!」
「はっはっは。たまには茶目っ気があるのもいいことです。」
「おう。確かにな。」
「意気投合しないでくださいっ!で・・ここは・・・」
「えぇ。学問の町ミンツです。・・ところであと二人いたはずですが見当たりませんね・・」
「遅いって・・キールさんとメルディさんならミンツに来てるはずです。」
「そうですか。まぁ微塵も興味はありませんが。」
「いいんかいそれでっ!」
「いいのです。ミンツといえば本家「ミンツまんぢう」が美味でして・・・」
「え?それなら製造中止になったそうですよ?」
「え・・・」
「案内人失格ですね。ちゃんと把握しておいてください。」
「・・・ジョネレーションギャップを感じます・・・」
「さぁ。気を取り直して行きましょう♪辺境のド田舎ラシュアンです。」
「リッドさん達の故郷でうね。」
「まぢでなにもないですのでカットさせていただきます。」
「・・・ってちょっと待てい!やる気あるんですかっ!あなたはっ!」
「さぁ・・・五分五分ということで・・・」
「半と半・・・絶妙な比率がポイントだな。」
「あんた達なに気があってるんですかっ!さぁ紹介してください!名物はなんですかっ!」
「仕方のない人ですねぇ。ラシュアンの名物といえば万年腰痛性悪村長が・・・」
「違うでしょっ!ラシュアン染めとか風車小屋とか色々あるでしょうがっ!」
「まぁそれもアリって線で・・・」
「もう嫌だぁ・・・・」
「さぁ、大樹の町モルルです。」
「・・・で?」
「樹に広く住む町の人たち。まるでその姿は他生物を糧に生きる細菌類のようですね。」
「黒い・・黒いって!感想が!!」
「他には・・・そうですね。キールさんの恩師が住んでいるはずです。」
「はず・・なんですか。」
「えぇ。なにぶん年ですし。明日の朝ご飯も食べれるかどうかの身でして。」
「か・・勝手なことを・・・」
「そういえばここからちょっと行ったところに水晶霊が住んでいますね。」
「へぇ・・それは初耳ですね・・」
「おやそうでしたか。どことなく私優越感に浸っております。」
「・・・ヤな人ですね・・・」
「さぁこちらがレグルス道場。巷で噂の殺劇ヒロインを養成したところですね。」
「・・・あとで一字一句違わず伝えておきましょう。」
「チャットさん冗談が過ぎますぞ・・・!」
「・・・なん・・で・・目が・・・本気・なんです・・・か・・はっ!首絞めないでくださいっ!」
「は。いや失礼。でも冗談じゃすまないような冗談は控えてくださいね♪」
「まぁ気が分からないわけじゃありませんが・・・」
「さぁこちらは扉を開いただけで道場屈指の猛者が殴りかかってくるという素晴らしいところです。」
「怖いってなんか・・・」
「剣で斬り合う修行中に話し掛けると「イタタ・・」で済むという屈強な門下生もいるのでチェックどころですね。」
「マニアックですって!ネタが!!」
「師範はやたら入門を奨めてきます。どうです?旅の思い出に・・・」
「いやですよっ!」
「・・・お菓子つきですが?」
「・・・え・・・?」
「チャットさんが数瞬迷ったので次行ってみましょう。」
「あぁあああ!!騙したっ!騙したなぁあ!!」
「こちら火晶霊の谷となっています。」
「・・・へぇ?火晶霊っていうと・・・フォッグさんに酷似したあの人ですか・・・」
「えぇ。吹雪の夜は夜な夜な泣きわめくそうです。」
「怖いって・・・」
「おう。遠距離恋愛って大変なんだな・・」
「違うって・・多分・・・」
「それを言ってしまったらまた泣いてしまうので留めておいてくださいね。」
「難儀ですねぇ・・男って種族は・・・」
「・・・アレだな。アレを男依然に人間に模していいもんなのか?」
「あなた酷いです。色々・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
「さぁインフェリア観光どうでしたか?さぞ素晴らしい時間を過ごされたことでしょう。」
「・・・・すっごく損した気分です。」
「・・・おう。」
「はっは♪今後ともレイちゃん率いるインフェリア旅行会社を御ひいきに♪」
「・・・もう来ないでくださいね。」
「それではサヨウナラっ!また会うその日まで・・・!」
「あ・結局あなたは何者なんです・・・・って行っちゃいました・・・」
チャットは帽子を被りなおすとなんとなく嘆息した。
・・・帰ろう。
「キールぅ。ミンツ名物「ミンツせんべえ」美味しいなぁ♪」
「いいから止まるなよ。ホラ。チャットを待たせているんだ。」
「バイバ!チャットとフォッグのおみやげ忘れたよぅ!」
「そんなのほっとけ!観光で色々買ってるだろ。・・・って・・ん?」
「どしたか?キール。」
「いや・・・今どっかで見たことある顔が・・・」
「?」
「・・・・気のせいか・・・。」
バンエルンティア号が火を噴き、海面を揺るがす。
轟音とともに飛び立ったそれを見上げるように男は微笑んでいた。
「ふふ・・・私の娯楽に付き合ってくださってありがとうございました。」
男は微笑みながら、帽子を脱ぎ金髪を髪になびかせた。
「さぁ・・・セイファートが待っている。私は帰りましょう・・・。」
男は。眺めのレイピアを腰に消えていった。
一瞬世界と空間がねじれた位置に、光がよぎった・・・そんな気がした。
ただただ光は・・・失われた極光の余波がインエフェリアの空を輝かすのだった・・・。
FIN
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