〜Endless Dream番外 継がれし炎〜


時の流れが経つのは実に短い。
確信に近い心境で彼はその人が来るのを待っていた。
巻き起こる厄災。避けることの出来ない道。・・・そして絶望。
すべてを事前に悟る。選ばれし者をその地へと誘う。
これが・・・彼に与えられた最後の勤めなのかもしれない。

・・・・・・・・・・・

 「まいったなぁ;迷っちゃった;」
親の言いつけ・・・というかで世界を回る旅を始めたのは結構前にさかのぼる。
父譲りの剣術と、母譲りの盗賊術を持ち合わせた彼女が平和になった世界を回ることは容易いと言っては容易い。
ゆういつ欲しかったモノ・・・居て欲しかったモノ・・・それは「相棒」だったかもしれない。

 「っていうか私って方向音痴?何よこの遺跡・・・」
辺りを見回しながら不平を漏らすが誰もいない。反応がない。
 「う〜ん・・・お宝とかあるかなぁ?」
血。なのかもしれない。彼女は実に母親・・・かの英雄ルーティ・エルロンの血が流れているのである。
エルロン。かつての英雄、世界の崩壊に立ち向かった若者、スタン・エルロンの娘に位置するのだ。
「なんか出そーなかんじ・・・早く抜け出さないと・・」
両の手を抱くようにひとつ身震いをする。静かな遺跡に彼女の声だけが響き渡っていた。
いや・・・気配を感じるには数瞬もいらなかった。
 「ギャアアアアア!!!」
2対の翼を持った魔物が突進してくる。全身青銅の色・・・いや全身青銅で出来ている魔物。
 「ガーゴイル!!?」
主の命により宝を守りし番人ガーゴイル。侵入者を感知すると襲ってくる習性がある。
非常に素早く、殺傷力もかなり高く、その爪は幾多もの毒素が振り込まれていると言われている。
鞘から手投げナイフを引き抜き、彼女は2本放った。
1本はガーゴイルの眉間を捕らえ、1本はガーゴイルの翼を壁に貼り付けにする。
 「遅いわよ〜ん♪あんた達が居るってコトはそれこそ宝の見込みが出てきたじゃない♪そこで大人しく見てなさい!」
 「ギシャアアアア!!!」
眉間に刺さっているナイフを意にも介さず、1体が突進してくる。
大きく空振りした右爪の一振りを身をよじり交わし、左に走り抜ける。
 「ひゃぁああ!??危ないっそんなので斬られたら痛いじゃない!!」
 「キシャアアアア!!!」
走って走って走り抜ける。冷たい石の床を踏みしめ、駆け回るが状況はよくはならなかった。
 「な・・何?ガーゴイルだったら宝から離れたら動かなくなるのに?余計に早くなってるじゃない・・ってきゃぁあ!?」
ガコ・・・足元の石床が人一人分穴を開け、彼女を床へと沈めた。


 「いつつつ〜;;なになに?部屋・・・?」
暗い。明かりがない訳でもないが辺りを伺うほどの光ではない。淡い赤の光が奥のほうで灯っている。
それが何かは・・・数歩進んだ時に気づいた。細身の刀身。紅い鍔。
真紅の細身の剣だ。その装飾は不思議な光を発していた。
 「・・・不思議な剣・・なんだか語りかけてくるみたい・・・」
 『・・・オイ』
 「そうね。例えるなら地獄の業火に焼き尽くされ、骨も身も引き裂かれる思いをするような赤・・・」
 『・・・ひどいな。』
 「冗談よ。・・・って誰!!??誰なの話かけてくるのはっ!普通に対応しちゃったじゃない!!」
シィ・・・ン・・・辺りは静まりかえっている。彼女の声が変わらず響く。
ガン!!ガタガタガタ!!!!
 「み・・・見つかった!?どどどど・・どうしよう!?」
彼女の大声で先ほどのガーゴイルに見つかってしまったらしい。床を掘り、襲おうとしている。
 『・・・力が欲しいか?』
 「・・・誰なの!?隠れてないで堂々と顔見せなさいよっ」
 『・・・目の前にいるだろうが。私だ・・・おまえの目の前に佇む『剣』が私だ。」
 「・・・は・・・・?」
 『疑うか?まぁそれでもいい。しかし今のおまえではガーゴイルの手を逃れることはできないだろう?手を貸してやろう・・・』
 「・・・なんか妖しい悪魔の契約じゃないわよね?」
 『断じて違うっ!!』
 「分かった信じるわっ!抜けばいいのね?」
 『早っ!』
ガゴォオオオン!!同時にガーゴイルが部屋へと飛び込んできた。飛来する石の破片の中から彼女を見つけると、ガーゴイルは大きく
手を掲げて突進してきた。
 『抜けっ!』
 「わわわわ!!えいっ!!!」
紅い閃光。石の祭壇から引く抜かれた細身の刀身が露になる。その刀身を掲げ、彼女は跳躍した。
 『着地と同時に剣を後方に引き、地を這わせろっ!』
 「はは・・はいっ!!」
バシュウウン!!!地を這う剣撃がガーゴイルの胴体へと直撃した。石で出来たガーゴイルを簡単に粉砕する。
 「な・・何!?これ・・・」
 「あの馬鹿者が得意としていた技のひとつ『魔神剣』だ。次は・・・』
2体目のガーゴイルの爪を避け、跳躍。少し高まった段へと登り、次の攻撃に備える。
 『上段の構えで心を落ち着かせろ!』
 「じょじょ・・・じょうだん??」
 『私を上に突き上げろっ!そして唱えるのだ。炎のイメージを・・・!!」
 「ほのおほのおほのお・・・・」
 『振り下ろせっ!!火晶術『ファイアボール』!!」
ギャアアアア!!断末魔を残してガーゴイルが消滅するのを見ながらダッキは呆然としていた。
 「あなた・・・何?」

・・・・・・・・・・・・・

 『私はおまえに使命を与えるべくこの地に自らを封印したのだ。』
遺跡を抜け、野原に出る。すっかり日が暮れた丘でテントを張り、焚き火をする。
女の野宿は危険なものだが、彼女にとってはさして慣れたものである。
 「封印?あんた何者?剣のくせに喋るわ、やたら強いわ・・・」
 『まぁ聞け。私達は十数年前ある若者達と世界の危機を救った。今に言う第2次天地大戦・・・』
 「へ?じゃあその若者ってお父さん達じゃん♪」
 『そういうコトになる。私はその時あの大馬鹿者スタン・エルロンの相棒として前線に立ち、闘っていた・・・』
 『すべての元凶を追い詰め、打ち破り、我々はある決断をせねばならなかった・・・』
 「決断?」
 『神の眼は知っているな?これの消滅だ。私達はこれの破壊へと導く糧となり、十数年前消滅したのだ・・・』
消滅。頭の中で復唱してみる。
 「・・・じゃああんたは何よ?剣のお化け?」
 『・・・聞け。消滅する間際、我々は他にもこの世界に危機が迫っていることに気づいた。正しくはこの世界じゃない・・・』
 『連動する3つの世界『アセリア』の消滅だ。『アセリア』『エターニア』は我々の住む世界と大きく関わりを持っているのだ。』
聞いた事の無い単語を整理する。
この剣の話だと、この世界を含め、3つの世界がどこかで共鳴しあっているらしい。
・・・そのうちひとつが消滅でもすれば、残りの2世界が大きく影響されることも充分に考えられる。
 『恐らく『エターニア』の世界からも使者が送られるだろう。そして・・・』
一拍置く。なんとなく嫌な予感を感じるが次の言葉を待つしかなかった・・・
 『そしてこの世界からの使者はおまえにしたのだ。』
 「んな勝手な!なんで私な訳?」
 『スタンの娘だろう?素質はバッチリだ。』
 「バッチリって・・・あのねぇ・・・」
 『・・・世界は窮地に立てられているのよ?立ち上がりなさい・・・』
 「ううぇえ!?声変わった!?」
 『アトワイト・・出てくるんじゃない。大事な話だ・・』
 『だからこそよ。ディムロス、あなたの説明じゃ漠然としてるじゃない。』
 「・・・・」
まるでその一本の剣に二人分の人格があるような口調・・・はっきり言って彼女は鳥肌を立てていた。
 『む。話がそれたな・・・どこまで話たか・・・?そうだ、やってくれないか?』
 「ってもねぇ・・・」
 『週給4000ガルド。』
彼女が決断に迫るまで数瞬も要さなかった。

・・・・・・・・・・・・・・

 「どうしてふたつの人格があるわけ?」
決断を早まってしまったのは少し後悔している。・・と言っても今更ではあるが。
 『神の眼を共に消滅しかけた時に、クレメンテ・・・私達と同じソーディアンだ。・・が私達二人を助けたのだ。』
 『2本のソーディアンが融合するコトによりディスクのプログラムがエラーを起こしてきっちり作動しなかったの。』
 「はぁ・・・・」
 『とにかくこの私『ディムロス』をこの『アトワイト』が融合したソーディアンと言うわけだな。』
 「名前は?なんて呼べばいいの?」
 『・・・・ディムワイト?』『止めなさいディムロス・・・』
 『さぁ着いたわ。この遺跡の奥よ・・・』
結局うやむやになってしまった。どう呼べばいいのだろう?
と思わないでもないがとりあえず忘れておいて、彼女は目前の遺跡を見やっていた。
過去天人が残したと言われている空間転移装置がこの奥で眠るらしい。
 『いい?装置を抜けたら人を探すの。そしたら時を待ちなさい。』
 「時・・・?」
 『時が来ればあなたは戦いへと誘われるわ。それまでの間異世界で剣を磨いて備えるの・・』
 「りょーかい。・・・にしても・・この装置本当に作動するの?」
あれこれ詮索するうちに目前へと迫った巨大な装置。
台の上に傘を載せたカプセル・・大雑把に見たらこうだ。
どう見ても朽ち果て寸前の代物である。
 『まぁ・・大丈夫だろう?行って来い』
 「え!?・・・一緒に来ないの?」
 『私達はここで装置を制御するディスクを作動させないと・・・大丈夫。いつか私達もそっちに行くわ。』
 「いつかって・・・いつよ・・・」
 『それは・・・』
ガァアアアアアア!!!!
強烈な雄たけびが遺跡を揺るがした。二足歩行の巨大な蜥蜴がこちらを見ている。
 「ド・・ドラゴン種族!?」
 『ち・・難儀な相手だ・・走れ!!右横から抜けるんだ!!』
 「う・・・うん!!」
彼女の体の8倍近くある巨体の真横をすり抜け、剣を構え走りぬける。
転移装置から大分離れてしまった。
 『剣を振り上げろ!!・・・イラプション!!!』
ゴゴゴゴ!!地響きを起こし辺りに溶岩が広がる。
溶岩を足元受けるが悲鳴ひとつ零さない。
 『な・・・!?』
 『デョムロス!!あいつは火属性よ!イラプションは効かないわ!!』
 「っど・・どどどどーすればいいの!?ってきゃああ!?」
振り払った尾を上跳びでかわし、間合いを取る。振り切った尻尾の反動を生かし重い胴をこちらに向けた!!
 『しまった!ドラゴンの正面に立つな!!』
 『・・・遅いッ!!』
骨さえも燃やし尽くす地獄の業火・・・ドラゴンのブレスは彼女を一撃で焼き払った。

意識を繋ぎとめるもの。それは在りはしない・・・
ただ流されるままに・・・抵抗はせずに彼女は冥府の扉へと近づいていた・・・
 「あれ・・・?」
黄泉の世界を見たかと思うと彼女は炎の中を立っていた。
 「・・・熱く・・ない?」
炎は確かに自らの足を焼き、髪を燃やしている。
だが・・・なんら熱くない。
 『・・・まさか・・・この技を使うものがもうひとりいたとは・・・な。』
 「え・・?」
見やると剣にドラゴンのブレスが収束している。
炎を纏った刀身は紅く輝き波動を放っている。
 『・・私を掲げ意識を研ぎ澄ませ・・・死闘の中にそれは・・ある。』
 「・・・ディムロス・・?」
 『放て!!あの頃の英雄が放たれし炎を!!』
刀身の輝きが増し、紅い閃光に見舞われる!!
やがてドラゴンのブレスは止み、そこには焼け爛れた地面の上に立つ彼女の姿があった。
跳ぶ!!ドラゴンの目前へと間合いを詰め、彼女は彼・・相棒ディムロスを払い、そして斬り込んだ。
 「『殺撃武荒剣ッッッ!!!!!』」

・・・・・・・・・・

紅き剣を継ぎし者・・・彼女は再び装置の前に佇み新たな旅立ちに備えていた。
 『・・いいな。少ししたら・・私達もそっちに向かう。』
 「うん・・・」
 『いいな。くじけず・・・おまえの父親を継ぎし信念で道を進め。・・いいな?』
 「うん!!」
 『そだ・・・名前・・教えてくれるかしら?』
アトワイトが静かに尋ねた。
やがて・・・彼女は口を開く。
 「・・ダッキ。ダッキ・エルロン」

Endless Dreamerダッキはアセリアの世界へと旅立ち、大成を果たす。
相棒との再会を信じて・・・

・・・・・・・・・

 「見つけたっ!ふふ♪この館やっぱり品揃えがいいわ♪」
ほくほく顔で彼女が倉庫をあさっている。
 「それにしても・・まぁさかこんな仕事の雇い主がいるとはねぇ?問題の用心棒様も出てこないじゃない?」
 「・・・それ俺のことか?」
 「きゃあ!?」
月をバックに男がこちらを見やっている。
年のころ10代後半。傍らには精霊がついている。
 「あ・・・あなたは?」
 「この館の雇われ用心棒正義の義賊「風の飛鏡」とは俺のことやっ!!」
 「・・・風邪の卑怯?」
 「五月蝿いわっ!!」

やがて・・・旅は始まる。
いや・・・既に始まっていたのかもしれない。
テイルズが交錯する真実を掲げて・・・・

〜END〜

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