02 星をおいかえて







2105年、地球。

民営のシャトル発射場のエントランスに腰をかける男が一人。


年の頃は30過ぎか。無精ひげにサングラスをかけている。
首にはタブペンダントをぶら下げ、国家資格である『第1級宇宙屑回収捜査官』のバッチが光っている。

通称星屑師。
宇宙に散らばる使いものにならない宇宙ステーションから宇宙の藻屑に消えた部品を回収する仕事である。
中には21世紀初頭に用いられていた、現在では採取が困難となった「鉄」が素材となっている部品を回収することもある。
こういった屑・・・彼等でいう「星屑」を回収するのが彼等の仕事だった。


男、ジム・レイザーはくわえたタバコを簡易灰皿に押し付けると、ロビーへ赴いた。



 「出発は今日3時。装備はいつもどーりで。」

無人のロビーで注文を上げ、テーブルにはめ込んだ丸い板に掌をおしつけた。

血管で感知するセンサーが光ると、男はエントランスをあとにした。





二本目のタバコに火をともし、男は空を見上げた。




 (ニューヨークもかわったよなぁ・・。)


3度目の世界大戦で力を失ったアメリカの衰退ぶりはすさまじいものだった。
21世紀では考えられなかった、アメリカの核放棄宣言で世界がどれほど沸き、経済がどれだけ狂ったか。

石油に代わる資源の発見を宇宙で見出し、宇宙産業が発展した。
それと同時に、彼等星屑師は生まれた。

宇宙に散らばった過去の遺産を彼等は追い求めている。

ある者は宇宙に消え、ある者は宇宙に魅入られた。


火星への人類移住が決まったのも20年前の話。
閑散としたニューヨークの町を歩き、ジムはポケットから懐中時計を取り出した。

父親からもらった、最初で最後の贈り物。

今父はどこにいるのかはわからない。


星の屑になったのか、今でも屑を追いかけているのか―――




ジムは宇宙に見せられ、屑を追い求めるあまり身を滅ぼしたクズを何人も見てきた。

かつての仲間達を思い描きながら、ジムはニューヨークを闊歩し、先ほどの施設に戻ってきた。




搭乗の手続きを済ませ、シャトルに乗り込む。






 「じゃあな。クズみたいな人間にクズみたいな星になっちまった地球。」


ジムはシャトルの入り口まで進むと、懐中時計を取り出すと、外へと投げつけた。






そして、クズみたいな地球から、一番クズみたいな男が去り、クズみたいな動物が地球から姿を消した。








最後のクズが屑を求めてクズみたいな宇宙に飛び立った。






・・・そして、ようやく地球からクズはいなくなった。











END










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